投稿

8月, 2020の投稿を表示しています

コラム:「ライブ配信」の新たな形 ——アフターコロナの世界を取り巻く音楽環境の変化——

  2020 年 7 月 5 日現在、新型コロナウイルス感染症( COVID-19) が猛威を振るっています。日々不安な情報が飛び交う一方、コロナウイルス流行終息後の新たなライフスタイル、「アフターコロナ」が話題を呼んでいます。コロナ渦が音楽環境にもたらした変化がどんなものであるかは、「ライブ配信」のあり方の変容にも色濃く現れています。   コロナウイルスの流行初期から、クラスターの発生地として話題になっていた「ライブハウス」では、オンラインでのライブ配信を始める所が増えてきています。しかし、そもそも「ライブ配信」という技術は、コロナウイルス流行の中で生まれたものではなく、ネット経由でのプロモーションに力を入れていたミュージシャン達が以前から取り入れていた技術でした。そうした技術が、コロナの状況下における感染予防の手段として浸透しつつあるのです。  とはいえ、多くのミュージシャンは当初、より多くのお客様に音楽を聴いてもらう為「ライブ配信」を補助的に用いていました。そしてこれは、子持ちの方や遠方に住み足を運べない人々にとって、ミュージシャンと繋がることができるきっかけともなりました。  しかしながら、コロナの影響で主流となりつつある「ライブ配信」は、そうした従来のものとは異なる形で現れます。それが「無観客ライブ配信」です。これはミュージシャンが、人のいない会場から YouTube や Facebook 、 Instagram といったタイムライン上で、「ライブ配信」を行うというものです。また、ミュージシャンが集結することなくそれぞれの家で演奏を行い、そのセッションをライブ配信するという活動も行われています。そして、インターネットなどのネットワーク越しに、できるだけ「音の遅延」をなくすように送り合うことで、離れた場所にいる人々が、リアルタイムでセッションすることができる「 NETDUETTO 」といった仕組みなどが、こうした活動を援助しています。  これらを行うミュージシャンの中には、閲覧権限を有料で販売したり、ネット上に投げ銭を募るなどといった方法で収入を得ているミュージシャンもたくさんいます。そうした中で、リスナーの音楽に対するお金の使い道もこの数ヶ月で大幅に変化していると言えるでしょう。また、ライブ配信を家で聴く為の環境を...

コラム:規制と戦うコロナ時代の音楽

  2020年3月頃、Facebookに投稿されたアーティストらによる演奏動画が、「ナクソス・オブ・アメリカ」に帰属するコンテンツを含むとして、配信を停止するよう忠告を受けました。さらにはこれを受けて、YouTubeでもこのコンテンツがブロックされてしまいました。実際には、その動画は既に著作権の切れた作曲家らの作品を演奏したものであり、誰の権利を侵害するものでもありませんでした。動画共有サイトのアルゴリズムが誤認したことによる不当なブロックだったとして、動画にかけられた規制はのちに解かれています。しかしながらこのような現状においては、著作権が切れているベートーヴェンやモーツァルトの演奏動画さえ、媒体いかんによっては規制されてしまう可能性が否定できないということです。オンライン上での音楽需要の高まりによって露呈したシステムの脆弱性は、演奏する場のみならず、演奏を公開する機会さえ完全に奪ってしまう危険性があり、早急な解決が必要と考えられます。 こうしたインターネットにおける規制は、その性質上、どの地域においても避けては通れないものですが、それに加えて、政府による規制がかけられている国もあります。フランスでは、「クォータ制」なるものがラジオ放送における音楽の扱いに制限を加えています。これは放送に際して、一定以上の割合で母国語の音楽を流さなければならないという制度です。 フランスの音楽雑誌『ディアパソン』によると、コロナ禍を受けた自粛はフランスにおいても、自宅を除く屋内、または野外での演奏活動を停滞させました。また、ポピュラー音楽を扱う主要なストリーミングサービスの需要も低下させたとの報告がなされています。対照的に、クラシックやジャズといったジャンルの音楽を配信するサービスについてはストリーミングやラジオを含め利用が増加しているようです。このような変化は、通勤時間の減少により、移動時間に主要なストリーミングサービスを利用していた人々からの需要が減ったことが関係していると言えるでしょう。テレワーク促進により自宅が仕事場となり、家庭と仕事の境界が曖昧になった人々にとって、クラシックなどのストリーミングサービスはある種の受け皿になったのかもしれません。これらの音楽によく期待される、集中力を補助する効果のために需要が高まったと考えられます。他にもコロナ...

コラム:ウィルス禍とオーケストラ 大阪フィルハーモニー交響楽団は今

  日本から遠く隔たった異国で数百年前につくられた音楽に命を吹き込み、現代の聴衆の心に届けるオーケストラ。そんなオーケストラの響きを伝えてくれる “ 空気 ” がいま脅かされています。 2020 年、未曾有のウィルス禍。各国の政治・経済的な状況が混迷を極める中、オーケストラもまた、かつてない困難に直面しています。フェスティバルホール(大阪・中之島)を中心に音楽活動を展開するオーケストラ、大阪フィルハーモニー交響楽団の動向を追いました。 大阪フィルハーモニー交響楽団は「関西交響楽団」として 1947 年に生まれました。創立者は、 2001 年までこの楽団の音楽総監督・常任指揮者を務めた朝比奈隆氏です。第二次世界大戦の爪あとが残る大阪で産声をあげた関西交響楽団は、演奏活動を精力的に展開、大阪の音楽文化において重要な役割を果たすようになります。 1960 年には「大阪フィルハーモニー交響楽団」と改称。以来、「大阪フィル」の愛称とともに個性と魅力あふれるオーケストラとして親しまれています。近年では「星空コンサート」「大阪クラシック」などの間口の広い企画を展開しつつ録音のリリースでも高い評価を得ており、 2020 年も更なる躍進を続けることが期待されていました。 しかし、新型コロナウィルスの流行が急速に拡大した結果、 2020 年 3 月には今までのような形式で演奏会を開催することが難しい状況になってしまいます。国内のオーケストラは、活動休止や LIVE 配信の利用など様々な対応を迫られました。大阪フィルハーモニー交響楽団は、クラシック音楽専門の配信サービス「カーテンコール」を介して、 I. ストラヴィンスキー作曲のバレエ音楽「春の祭典」などをプログラムとする第 536 回定期演奏会の「無観客 LIVE 配信」を 3 月 19 日に実施しています(その後、同サービスでアーカイブ配信)。また、楽団の創立 70 周年記念として、朝比奈隆氏がタクトを振る演奏会の記録映像も同サービスにて無料配信されました。 大阪フィルハーモニー交響楽団が音楽活動を続けるためには配信サービスを利用せざるをえない状況がしばらく続いていましたが、やがてウィルスの感染拡大スピードが鈍化してきます。これを受けて、 6 月の中旬には約 3 ヵ月ぶりにオーケストラの練習を実施。 6 月 26 日・ ...

はじめのご挨拶

  このたび、京都市立芸術大学音楽学部の音楽学専攻生によるブログを開設することになりました。 このブログでは、音楽学部の2020年度開講科目、「音楽学演習b」の活動を報告します。 また、今年度中の開設を目指している音楽学専攻のホームページの前段階としても位置付けています。 コロナ禍の影響で、「音楽学演習b」は例年と異なる内容となり、リモート授業という慣れない環境に四苦八苦することもありました。 しかし、音楽学専攻生と実技専攻生がそれぞれ分野の垣根を越えて話し合いを重ね、コンテンツを作り上げることができました。 今後は、授業の担当教員である池上先生からのごあいさつ、楽曲解説を添えたリモート演奏の動画、コロナ時代の音楽文化に関するコラム記事を随時公開してゆくつもりです。 来訪された皆さまに楽しんでいただければ幸いです。 どうぞよろしくお願いいたします。 ガード エミリ(音楽学専攻3回生)