コラム:規制と戦うコロナ時代の音楽

 

2020年3月頃、Facebookに投稿されたアーティストらによる演奏動画が、「ナクソス・オブ・アメリカ」に帰属するコンテンツを含むとして、配信を停止するよう忠告を受けました。さらにはこれを受けて、YouTubeでもこのコンテンツがブロックされてしまいました。実際には、その動画は既に著作権の切れた作曲家らの作品を演奏したものであり、誰の権利を侵害するものでもありませんでした。動画共有サイトのアルゴリズムが誤認したことによる不当なブロックだったとして、動画にかけられた規制はのちに解かれています。しかしながらこのような現状においては、著作権が切れているベートーヴェンやモーツァルトの演奏動画さえ、媒体いかんによっては規制されてしまう可能性が否定できないということです。オンライン上での音楽需要の高まりによって露呈したシステムの脆弱性は、演奏する場のみならず、演奏を公開する機会さえ完全に奪ってしまう危険性があり、早急な解決が必要と考えられます。


こうしたインターネットにおける規制は、その性質上、どの地域においても避けては通れないものですが、それに加えて、政府による規制がかけられている国もあります。フランスでは、「クォータ制」なるものがラジオ放送における音楽の扱いに制限を加えています。これは放送に際して、一定以上の割合で母国語の音楽を流さなければならないという制度です。

フランスの音楽雑誌『ディアパソン』によると、コロナ禍を受けた自粛はフランスにおいても、自宅を除く屋内、または野外での演奏活動を停滞させました。また、ポピュラー音楽を扱う主要なストリーミングサービスの需要も低下させたとの報告がなされています。対照的に、クラシックやジャズといったジャンルの音楽を配信するサービスについてはストリーミングやラジオを含め利用が増加しているようです。このような変化は、通勤時間の減少により、移動時間に主要なストリーミングサービスを利用していた人々からの需要が減ったことが関係していると言えるでしょう。テレワーク促進により自宅が仕事場となり、家庭と仕事の境界が曖昧になった人々にとって、クラシックなどのストリーミングサービスはある種の受け皿になったのかもしれません。これらの音楽によく期待される、集中力を補助する効果のために需要が高まったと考えられます。他にもコロナ禍という不安の強い状況下において、音楽の持つリラックス効果を期待する向きもあったのではないでしょうか。

こうした需要の変化の中で、フランスの民間ラジオ局は、政府からの要求との板挟みに苦心しています。利用者が増加した局もある一方、「クォータ制」の存在が足かせとなって広告費が減少し、苦しんでいる局もあるといいます。母国文化の押し付けとも取れるこの制度が若い世代をストリーミングサービスへ流入させているとの考えから、文化相はそちらにも同様の規制をかけるとラジオで発言し、規制強化への意欲を示しています。現在は、政府に対するラジオ局の要請により、「クォータ制」は一時的に緩和されているものの、フランスにおけるオンラインでの音楽の聴き方は、今後も政府により左右されていくことが予想されるでしょう。

このように、インターネットというグローバルな領域と同様、一国の民間ラジオ局といったローカルな領域においても、コロナ禍に影響された規制との戦いが繰り広げられています。音楽に携わる者として、今後の動向に注目していきたいところです。


文責:ガード エミリ(音楽学専攻三回生)


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参考記事

・Covid-19 : pourquoi l'écoute de la musique classique a explosé pendant la pandémie

https://www.diapasonmag.fr/a-la-une/covid-19-pourquoi-l-ecoute-de-la-musique-classique-a-explose-pendant-la-pandem-30294

・Quand les réseaux sociaux bloquent la musique classique

https://www.diapasonmag.fr/a-la-une/quand-les-reseaux-sociaux-bloquent-la-musique-classique-30275

・フランス「自国語愛」にラジオ局が悲鳴上げる訳――厳しすぎる規制にラジオ局が救済求める

https://toyokeizai.net/articles/-/354871

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