コラム:ウィルス禍とオーケストラ 大阪フィルハーモニー交響楽団は今

 日本から遠く隔たった異国で数百年前につくられた音楽に命を吹き込み、現代の聴衆の心に届けるオーケストラ。そんなオーケストラの響きを伝えてくれる空気がいま脅かされています。2020年、未曾有のウィルス禍。各国の政治・経済的な状況が混迷を極める中、オーケストラもまた、かつてない困難に直面しています。フェスティバルホール(大阪・中之島)を中心に音楽活動を展開するオーケストラ、大阪フィルハーモニー交響楽団の動向を追いました。

大阪フィルハーモニー交響楽団は「関西交響楽団」として1947年に生まれました。創立者は、2001年までこの楽団の音楽総監督・常任指揮者を務めた朝比奈隆氏です。第二次世界大戦の爪あとが残る大阪で産声をあげた関西交響楽団は、演奏活動を精力的に展開、大阪の音楽文化において重要な役割を果たすようになります。1960年には「大阪フィルハーモニー交響楽団」と改称。以来、「大阪フィル」の愛称とともに個性と魅力あふれるオーケストラとして親しまれています。近年では「星空コンサート」「大阪クラシック」などの間口の広い企画を展開しつつ録音のリリースでも高い評価を得ており、2020年も更なる躍進を続けることが期待されていました。

しかし、新型コロナウィルスの流行が急速に拡大した結果、20203月には今までのような形式で演奏会を開催することが難しい状況になってしまいます。国内のオーケストラは、活動休止やLIVE配信の利用など様々な対応を迫られました。大阪フィルハーモニー交響楽団は、クラシック音楽専門の配信サービス「カーテンコール」を介して、I.ストラヴィンスキー作曲のバレエ音楽「春の祭典」などをプログラムとする第536回定期演奏会の「無観客LIVE配信」を319日に実施しています(その後、同サービスでアーカイブ配信)。また、楽団の創立70周年記念として、朝比奈隆氏がタクトを振る演奏会の記録映像も同サービスにて無料配信されました。

大阪フィルハーモニー交響楽団が音楽活動を続けるためには配信サービスを利用せざるをえない状況がしばらく続いていましたが、やがてウィルスの感染拡大スピードが鈍化してきます。これを受けて、6月の中旬には約3ヵ月ぶりにオーケストラの練習を実施。626日・27日にはフェスティバルホール(大阪市北区)にて第539回定期演奏会が開催されました。もともと予定されていたプログラムの目玉は、大勢の奏者が織りなす豪華絢爛なサウンドが魅力的なR.シュトラウスの交響詩でした。しかし、今や舞台上に奏者がひしめきあうような状況は避けなければなりません。プログラムは、より少ない人数で演奏できるL.V.ベートーヴェンの交響曲第4番・第5番に変更されました。曲と曲のあいだには休憩時間が通常設けられますが、聴衆が室内に留まる時間を短く抑えるために、今回は設けられません。聴衆はもちろん奏者同士も1.52mの間隔を保ち、ふだんは2人で1本の譜面台を共有する弦楽器奏者であっても11本の譜面台を使うなど、感染予防策が慎重にとられました。

今までとまったく同じ形ではないにしても、大阪フィルが奏でる音楽にじかに触れられる機会をふたたび得られたのは、私たちクラシック音楽愛好家にとって喜ばしいことです。72223日開催の第540回定期演奏会では、舞台上のソーシャルディスタンス(社会的距離)を保ちつつ、多数の弦楽器奏者が必要なA.ブルックナーの交響曲を演奏することが決まっています。大阪フィルの演奏会は少しずつかつての姿を取り戻している、といえるかもしれません。

しかし、楽団にとってはいまだ困難な状況が続いています。上述した第540回定期演奏会についても、指揮を予定していたユベール・スダーン氏が新型コロナウィルス感染拡大防止の影響に伴う外国人入国制限により来日不可となったために、指揮者を変更する旨が告知されています。また、国や大阪府の方針によって演奏会の集客数や開催方式は引き続き厳しく制限されており、定期会員の新規募集を中止することが622日に発表されています。

私たちがコンサートホールに行き、演奏会を聴くという形でオーケストラに接することは、コロナ禍以前よりもはるかに難しくなりました。各オーケストラはみずからの音楽を絶やすまいと手を尽くしていますが、これまで安定的に得ていた〝演奏会による収入を絶たれた状況がこのまま続けば、解散する団体が続出する可能性もあります。ひいきの楽団が財政難に陥っているのであれば、中止になった演奏会のチケットぶん寄付や投げ銭を行うなど、積極的に支援するのがよいでしょう。

        

文責:名田 卓麻(弦楽専攻2回生)


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参考ページ

大阪フィルハーモニー交響楽団公式

https://www.osaka-phil.com/

朝比奈隆と大阪フィルの貴重なアーカイブ映像を「カーテンコール」にて現在無料配信中(ニコニコニュース)

https://news.nicovideo.jp/watch/nw7399830

★無観客LIVE配信★大阪フィル 536回定期演奏会(MICHIYOSHI INOUE OFFICIAL WEB SITE

https://www.michiyoshi-inoue.com/2020/03/_536.html

540回定期演奏会 指揮者変更のお知らせ(公式)

http://www.osaka-phil.com/news/detail.php?d=20200627

ソーシャルディスタンスの正解とは オーケストラの苦悩(産経新聞)

https://news.yahoo.co.jp/articles/d260d68c902328dc3e5407d017ba97189eee8fdd

後期1回券チケット発売延期ならびに後期定期会員新規募集中止のお知らせ(公式)

http://www.osaka-phil.com/news/detail.php?d=20200622

大阪フィル、コロナ前の大編成復活で臨む定期演奏会

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61107670T00C20A7BC8000/

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